この記事で分かること
- 解雇予告手当の計算に用いる「平均賃金」の算出方法
- 支払いが必要になる主なケースと、免除される条件
- 退職金規程との関係で確認しておきたい点
- 具体的な金額例と、準備に必要な書類のチェックリスト
解雇予告手当とは何か
飲食店の閉店でやむを得ず雇用契約を終了する場合、労働基準法第20条により、少なくとも30日前までの予告が原則とされています。30日を下回る期間しか予告できないときには、その不足日数に応じて平均賃金を支払う必要があります。これが解雇予告手当です。
閉店という事情はあっても、即日解雇や短期間での契約終了を検討せざるを得ない場面では、この手当の発生を想定しておくことが求められます。※具体例は店舗の契約内容・状況により異なります。
解雇予告手当の発生は、閉店手続きの全体スケジュールに影響します。30日前の通知が難しい場合、資金繰りの見直しが必要になることもあります。手当の金額を事前に把握しておくことで、閉店後の生活設計や次の資金計画を立てやすくなります。
平均賃金の計算方法
解雇予告手当の金額は「平均賃金×不足日数」で求められます。平均賃金は、解雇を通知した日以前3ヶ月間に支払った賃金の総額を、その期間の総日数で割って算出します。計算に含める賃金には基本給だけでなく、残業手当・深夜手当・家族手当などの諸手当も含まれます。
- 直近3ヶ月分の賃金台帳・タイムカードを準備する
- 基本給・諸手当(残業手当・深夜手当を含む)の合計を計算
- 3ヶ月の総日数(歴日数)で除して1日あたりの平均賃金を求める
- 不足日数に平均賃金を乗じて手当総額を算出する
- 算出結果を給与明細と照合し、端数処理のルールを確認する
例:3ヶ月間の賃金総額が135万円、総日数が92日の場合
135万円 ÷ 92日 = 約14,674円(1日あたり)
30日未満の予告しかできない場合、不足した日数分を上記の金額で乗じて手当を算出します。端数が出た場合は、労働基準法の端数処理に関する通達を参考に、店舗の給与規定と照らし合わせて処理してください。
支払いが不要になるケース
労働基準法では、以下のいずれかに該当するときは解雇予告手当の支払いが免除される可能性があります。
- 天災事変その他やむを得ない事由により事業の継続が不可能になったとき
- 労働者の責に帰すべき事由(懲戒解雇など)で、所轄労働基準監督署長の認定を受けたとき
閉店自体が「やむを得ない事由」に該当するかは、店舗の状況や契約内容により異なります。判断に迷う場合は、管轄の労働基準監督署で確認することをおすすめします。
免除の可否を判断するためには、閉店に至った経緯や、店舗の財務状況を客観的に示す資料が必要になる場合があります。日々の帳簿や、大家・取引先とのやり取り記録を整理しておくと、確認の際に役立ちます。
退職金規程との関係で確認したいこと
解雇予告手当と退職金は性質が異なります。退職金規程に「解雇の場合も支給する」と定められている場合は、別途退職金を支払う必要が生じる可能性があります。
確認手順:
- 就業規則・退職金規程の該当条文を抜粋する
- 「解雇」「普通解雇」「整理解雇」に関する記述をチェック
- 支給要件・算定方法・支給時期をメモする
- 過去3年間の退職金支給実績を一覧化する
- 従業員ごとに個別合意がある場合は、その文書も併せて確認する
退職金規程が整備されていない場合でも、過去の慣行や口頭での約束が問題になるケースもあります。契約書類一式を再確認のうえ、必要に応じて専門家にご相談ください。
事前に準備しておきたい書類チェックリスト
- 直近3ヶ月分の賃金台帳・給与明細
- タイムカードまたは出勤簿
- 就業規則・退職金規程の写し
- 雇用契約書(解雇条項の記載を確認)
- 解雇通知書のひな型(予告日数と手当額を明記)
これらを事前に揃えておくことで、閉店時の手続きがスムーズになります。金額の目安を把握しておくことは、資金計画を立てる上でも役立ちます。
費用内訳の目安と資金計画のポイント
解雇予告手当の金額は、店舗の規模やスタッフの人数によって大きく異なります。以下は、平均的な小規模飲食店(アルバイト・パート中心、5名程度)で30日分の手当を全額支給する場合の参考例です。
| 項目 | 金額の目安 | 備考 |
|---|---|---|
| 平均賃金(1日あたり) | 12,000–18,000円 | 基本給+諸手当の3ヶ月平均 |
| 30日分の手当総額 | 360,000–540,000円 | 5名全員に支給した場合 |
| 源泉徴収額(目安) | 総額の約6.3% | 所得税相当 |
※具体例は店舗の契約内容・状況により異なります。実際の金額は賃金台帳に基づいて算出してください。資金繰りに余裕を持たせるため、閉店予定の3ヶ月前から概算を立てておくことをおすすめします。
平均賃金算出時の注意点と端数処理
平均賃金を算出する際には、賃金台帳に記載されているすべての支給項目を再確認することが大切です。残業手当や深夜手当だけでなく、家族手当・役職手当・通勤手当など、名称に関わらず実際に支払われた金額をすべて合算します。3ヶ月間の総日数には土日祝日も含めて歴日数で計算するため、暦の確認も必要です。
端数処理については、1円未満の端数が出た場合に切り上げ・切り捨てのどちらを採用するかは、店舗の給与規定や過去の運用実績によって異なります。労働基準法に関する通達では、端数処理の方法を就業規則に明記しておくことが推奨されています。実際に計算を行う際は、複数の担当者で二重チェックを行うと、計算ミスを防ぎやすくなります。
解雇通知書の記載例と提出先
解雇通知書を作成する際は、解雇日・予告日数・手当額を明記する必要があります。以下は、記載内容の例です。
- 解雇日:令和○年○月○日
- 予告日数:20日(不足10日分を手当で支給)
- 手当額:平均賃金14,674円×10日=146,740円
通知書は、解雇対象者本人に直接手渡し、受領印をもらうか、内容証明郵便で送付する方法が一般的です。管轄の労働基準監督署へは、解雇予告手当の計算根拠となる賃金台帳やタイムカードの写しを、事前に確認しておくとスムーズです。
よくある質問
解雇予告手当は退職金と二重に支払う必要がありますか
退職金規程に解雇の場合の支給が定められている場合は、別途支払う可能性があります。規程の内容を確認し、必要に応じて管轄機関で確認してください。
平均賃金の計算でボーナスは含まれますか
通常、賞与は平均賃金の算定基礎に含まれません。ただし、毎月定額で支払われる手当は含まれることが多いため、賃金台帳で確認が必要です。
閉店が決まっているのに30日前の通知が難しい場合は
不足日数分の平均賃金を支払うことで対応できる場合があります。状況により異なるため、労働基準監督署への相談を検討してください。
解雇予告手当の支払期限はいつですか
労働基準法上、解雇予告手当は解雇の効力が生じる日までに支払う必要があります。賃金支払いのルールに従い、事前に準備を進めておくことが望ましいとされています。
平均賃金の計算で休日出勤手当は含めますか
休日出勤手当は、実際に支払われた賃金に含まれるため、平均賃金の算定に含めるのが一般的です。賃金台帳で該当項目を確認してください。