この記事で分かること
- 借入金残高を把握するための確認手順
- 公的支援制度の利用可否を判断するポイント
- 債権者・金融機関への連絡タイミングの目安
- 必要書類の準備と提出先の確認方法
1. 借入残高と契約内容の全体像を把握する
借入金が残ったまま廃業を考える場合、まず現在の借入残高と返済条件を正確に把握することが重要です。複数の金融機関から融資を受けている場合は、各契約書の最終返済日・金利・担保設定の有無を一覧にまとめます。
- 借入先ごとの残高証明書(直近のもの)を請求する
- 保証人・連帯保証人の有無と連絡先を確認する
- 担保にしている不動産や設備の評価額を概算で記録する
※具体例は店舗の契約内容・状況により異なります。複数の借入がある場合は、借入先ごとに残高と条件を表に整理すると全体像がつかみやすくなります。
借入残高を一覧化する際は、以下の表のように整理すると確認漏れを防ぎやすくなります。
| 借入先名称 | 残高(万円) | 金利(年率) | 最終返済日 | 担保の有無 | 保証人の有無 |
|---|---|---|---|---|---|
| A銀行 | 850 | 2.5% | 2027/3 | あり | あり |
| B信用金庫 | 420 | 1.9% | 2026/9 | なし | なし |
| 日本政策金融公庫 | 630 | 1.6% | 2028/12 | あり | あり |
残高証明書は各金融機関の窓口またはインターネットバンキングから請求できます。発行手数料は金融機関により異なりますが、1通あたり500円–2,000円程度が目安とされています。保証人・連帯保証人が複数いる場合は、連絡先・続柄・連絡優先順位を別紙にまとめておくと、後続の手続きでスムーズです。
2. 公的支援制度の利用可能性を確認する
廃業時の借入整理では、一定の要件を満たせば公的支援制度を活用できる場合があります。制度の利用可否は、店舗の業態・売上推移・借入先の種類によって異なりますので、まずは制度の概要と相談窓口を調べることをおすすめします。
主な確認先の例:
- 日本政策金融公庫の「経営改善・事業再生支援」窓口
- 各都道府県の「中小企業支援センター」または「よろず支援拠点」
- 商工会・商工会議所の経営指導員
支援内容は「返済猶予のあっせん」や「経営計画策定支援」など多岐にわたります。制度を利用する場合は、売上・経費の推移を示す資料(直近3期分程度)が必要になるケースが多いため、事前に準備を進めておくとスムーズです。
支援制度を利用する際の費用負担の目安を以下の表にまとめました。
| 支援内容 | 費用負担の目安 | 必要書類の例 | 相談から利用開始までの目安期間 |
|---|---|---|---|
| 返済猶予あっせん | 無料–数万円 | 試算表・資金繰り表 | 2–6週間 |
| 経営計画策定支援 | 無料–10万円程度 | 直近3期の決算書 | 1–3ヶ月 |
| 債務整理計画策定支援 | 無料–15万円程度 | 財産目録・借入一覧表 | 2–4ヶ月 |
制度の利用可否や必要書類は各自治体・支援機関により異なるため、まずは電話で概要を確認し、必要に応じて来所予約を入れる流れが一般的です。
3. 債権者・金融機関への連絡タイミングと準備
借入金が残る状態で廃業を検討する場合、金融機関への連絡をいつ行うかが重要になります。連絡が遅れると、信用情報への影響や追加費用の発生につながる可能性もあるため、早めの相談が望ましいとされています。
連絡前に準備しておきたいこと:
- 直近の試算表と資金繰り表を作成する
- 廃業後の収入見込み(再就職・別事業など)を簡潔に整理する
- 保証人への事前説明内容をメモしておく
連絡先は借入先の担当支店または本部の事業再生部署が一般的です。連絡後は、担当者から提出を求められる書類(経営計画書・財産目録など)の提出期限を確認し、対応を進めます。
連絡前に準備するチェックリストを以下に示します。
- [ ] 直近3ヶ月分の試算表(売上・原価・人件費・家賃の内訳)
- [ ] 資金繰り表(今後6ヶ月分の入出金見込み)
- [ ] 借入残高一覧表(先述の表を活用)
- [ ] 保証人一覧(氏名・続柄・連絡先・保証限度額)
- [ ] 廃業後の収入見込メモ(再就職先候補・別事業計画の有無)
連絡先の担当部署は、借入先のホームページまたは通帳の振込先欄に記載されている「事業再生部」「債権管理部」などで確認できます。連絡は平日の午前中が繋がりやすい傾向があります。
4. 保証人・連帯保証人への対応と確認事項
保証人がいる場合、廃業後の返済負担が保証人に移る可能性があるため、早い段階で状況を共有しておくことが推奨されます。保証人への説明を後回しにすると、後々のトラブルにつながるケースも報告されています。
保証人対応で確認しておきたい点:
- 保証契約書の写しと保証範囲(元本・利息・遅延損害金)の確認
- 保証人が複数いる場合の按分方法
- 保証人自身が債務整理を検討する必要があるかの判断材料
保証人への連絡は、まずは電話で状況を伝え、その後書面で詳細を共有する方法が一般的です。保証人が高齢の場合や連絡が取りにくい場合は、行政機関や支援機関に同席を依頼できるか相談してみるのも一つの方法です。
保証人対応の進め方を番号付きで整理すると以下のようになります。
- 保証契約書のコピーを各保証人ごとに用意する
- 保証範囲(元本のみか、利息・遅延損害金を含むか)を赤線で明示する
- 電話で日程調整を行い、面談または書面送付の方法を決める
- 面談時は「今後の返済計画が未定であること」「支援機関に相談中であること」を伝える
- 面談後1週間以内に内容をまとめた書面を郵送する
保証人が複数いる場合は、按分方法(均等・借入割合・収入割合など)を事前に金融機関に確認しておくと、説明時の混乱を減らせます。
5. 必要書類のリストと提出先の整理
借入整理を進めるにあたり、複数の機関に提出する書類を事前に揃えておくと手続きが円滑になります。以下は一般的に求められる書類の例です。
| 書類名 | 取得・作成先 | 提出先例 | 目安期限 |
|---|---|---|---|
| 残高証明書 | 各金融機関 | 金融機関・支援機関 | 連絡後1週間以内 |
| 試算表・決算書 | 税理士または自社作成 | 支援機関・金融機関 | 連絡後2週間以内 |
| 財産目録 | 自社作成 | 金融機関・支援機関 | 連絡後2週間以内 |
| 廃業届出書類 | 税務署・自治体 | 税務署・保健所・自治体 | 廃業後1ヶ月以内 |
書類の提出先や期限は、借入先や利用する支援制度によって異なるため、実際に連絡した際に確認するようにしてください。
書類作成時の注意点をチェックリストでまとめます。
- [ ] 残高証明書は発行日から1ヶ月以内のものを用意する
- [ ] 試算表は月次で作成し、売上・原価・固定費の内訳を明記する
- [ ] 財産目録は預貯金・売掛金・在庫・設備・不動産の順に記載する
- [ ] 各書類に「作成日」と「作成者氏名」を必ず記入する
- [ ] 提出前にコピーを2部作成し、1部は自分で保管する
よくある質問
借入金が残っていても廃業は可能ですか?
借入金が残っている状態でも、廃業手続き自体は可能です。ただし、借入金の返済義務は残るため、返済計画や債務整理の方法を別途検討する必要があります。まずは金融機関や支援機関に相談し、自身の状況に合った対応策を検討することをおすすめします。
保証人がいる場合、廃業前に保証人に連絡する必要がありますか?
保証人がいる場合、廃業を検討する段階で状況を共有しておくことが望ましいとされています。連絡を後回しにすると、返済負担が突然保証人に移る可能性もあるため、早めの説明が推奨されます。具体的な連絡方法については、支援機関に相談しながら進める方法もあります。
公的支援制度を利用する場合、どのくらいの期間がかかりますか?
制度によって異なりますが、初回相談から支援開始まで1–3ヶ月程度かかるケースが一般的です。必要書類の準備や金融機関との調整に時間がかかるため、廃業を検討し始めた段階で早めに相談窓口に連絡しておくと良いでしょう。
借入金整理を専門家に依頼する場合の費用相場は?
依頼する専門家や手続き内容によって異なりますが、数十万円程度の費用がかかるケースもあります。費用負担が大きい場合は、公的支援制度の利用や分割払いの可否についても併せて確認することをおすすめします。
廃業後に借入金が残った場合、自己破産は必要ですか?
自己破産はあくまで一つの選択肢であり、必ずしも必要ではありません。任意整理や民事再生など、他の債務整理手続きを検討できる場合もあります。自身の資産状況や返済能力に応じて、支援機関や専門家に相談しながら判断することをおすすめします。