この記事で分かること
- 居抜き売却収入の所得区分と課税の考え方
- 設備の取得価額・減価償却費を基にした所得計算の目安
- 売却契約書に記載すべき金額内訳と注意点
- 確定申告に必要な書類と提出期限・提出先
居抜き売却収入の所得区分と課税の基本
居抜き売却で受け取る対価は、事業用資産の譲渡に該当するケースが多く、所得税(または法人税)の課税対象となります。個人事業主の場合、譲渡所得ではなく事業所得として扱われることが一般的です。売却価格から設備の取得価額を差し引いた残りが利益となり、そこから必要経費を控除した金額が課税所得の計算基礎になります。
※具体例は店舗の契約内容・状況により異なります。
売却価格の内訳を明確にしておくことが重要です。設備ごとに取得価額と経過年数を整理し、減価償却費を計算したうえで、売却益を算出します。税務署では「設備の種類」「耐用年数」「取得年月日」の3点を特に確認するため、事前にこれらを一覧表でまとめておくと手続きが円滑です。
売却収入を所得区分ごとに整理する際は、以下のチェックリストを参考にしてください。
- 売却対象が「事業用資産」であることを確認
- 個人事業主か法人かで所得区分が変わる可能性を把握
- 売却価格の総額と設備ごとの内訳を分けて記録
- 減価償却累計額を計算し、帳簿価額を算出
- 売却益または売却損の金額をメモ
設備取得価額と減価償却費の計算手順
設備の取得価額を把握していない場合は、購入時の領収書や固定資産台帳、確定申告書の減価償却費明細を確認します。耐用年数は国税庁が公表する「減価償却資産の耐用年数表」を参照してください。
以下は、厨房設備を例にした簡易計算の目安です。
| 設備名 | 取得価額 | 耐用年数 | 経過年数 | 減価償却累計 | 帳簿価額(目安) |
|---|---|---|---|---|---|
| 業務用冷蔵庫 | 80万円 | 6年 | 4年 | 約53万円 | 約27万円 |
| 食洗機 | 40万円 | 5年 | 3年 | 約24万円 | 約16万円 |
| 換気扇一式 | 25万円 | 15年 | 8年 | 約13万円 | 約12万円 |
帳簿価額が売却価格を下回る場合、その差額が売却益となります。逆に売却価格が帳簿価額を下回る場合は、売却損として他の事業所得と通算できる可能性があります。計算が複雑な場合は、税務署や税理士に確認することをおすすめします。
設備ごとの取得価額を整理する手順は以下の通りです。
- 購入時の領収書・見積書・固定資産台帳をすべて集める
- 各設備の取得年月日と取得価額を表にまとめる
- 国税庁「減価償却資産の耐用年数表」で耐用年数を確認
- 経過年数を計算し、減価償却累計額を算出
- 帳簿価額(取得価額-減価償却累計額)を求める
- 売却価格と帳簿価額の差額を売却益または売却損として記録
売却契約書で確認すべき金額内訳と大家承諾
居抜き売却では、造作譲渡料と設備譲渡料を分けて記載することが推奨されます。造作譲渡料は内装工事部分、設備譲渡料は厨房機器等を指すため、税務上も区分して扱いやすくなります。契約書に「造作譲渡料○○万円、設備譲渡料○○万円」と明記しておくと、申告時の根拠資料として役立ちます。
大家の承諾を得る際は、譲渡先の事業内容や使用期間について事前に確認を求められるケースがあります。承諾書に「居抜き譲渡を認める」旨を記載してもらうと、後のトラブルを避けやすくなります。契約書・承諾書の写しは、確定申告時に提出を求められる可能性があるため、5年間は保管しておきましょう。
契約書作成時に確認したい金額内訳の例を以下に示します。
| 項目 | 金額(例) | 備考 |
|---|---|---|
| 造作譲渡料 | 150万円 | 内装工事・カウンター等 |
| 設備譲渡料 | 120万円 | 冷蔵庫・食洗機・換気扇 |
| その他譲渡料 | 30万円 | 看板・什器等 |
| 合計 | 300万円 | 契約書に総額と内訳を記載 |
大家承諾を得る前に確認しておきたいチェックリストは以下の通りです。
- 賃貸借契約書に「譲渡禁止」条項がないか確認
- 大家への通知期限(例:退去の3ヶ月前まで)が定められているか
- 居抜き譲渡を認める承諾書の書式サンプルを入手
- 譲渡先の業種・営業時間を大家に事前説明
- 承諾書受領後に写しを5年間保管
確定申告に必要な書類と提出期限・提出先
個人事業主の場合、売却した年の翌年2月16日から3月15日までの間に、住所地の税務署へ確定申告書を提出します。主な添付書類は以下の通りです。
- 確定申告書B(第一表・第二表)
- 収支内訳書(一般用)または青色申告決算書
- 居抜き売却契約書の写し
- 設備の取得価額が分かる領収書・固定資産台帳の写し
- 減価償却費の計算明細
青色申告を行っている場合は、65万円または10万円の特別控除が適用される可能性があります。e-Taxを利用すると、提出書類の一部を省略できる場合もあります。提出前に税務署へ電話で確認すると、必要書類の漏れを防げます。
申告書提出前に準備する書類チェックリストを以下にまとめます。
- 確定申告書B(第一表・第二表)の控え用紙を2部用意
- 収支内訳書または青色申告決算書の該当年度分
- 居抜き売却契約書・大家承諾書の写し(各1部以上)
- 設備購入時の領収書・固定資産台帳の写し
- 減価償却費計算明細(Excelまたは手書き表)
- 源泉徴収票・支払調書(該当する場合)
提出先・期限の目安は以下の通りです。
- 提出先:住所地を管轄する税務署(e-Taxの場合はオンライン)
- 提出期間:売却した年の翌年2月16日~3月15日(土日祝の場合は翌営業日)
- 納税期限:申告書提出と同時、または3月15日まで
- 延長申請:災害等の理由がある場合は税務署へ相談
売却価格の相場感と税金への影響
居抜き売却の相場は、立地・設備の状態・残存耐用年数によって大きく異なります。首都圏の飲食店の場合、坪単価3–8万円程度で取引される事例が複数報告されています。売却価格が高いほど売却益が増え、税負担も大きくなります。
売却益が300万円を超えると、所得税・住民税合わせて約30–40万円程度の納税額になるケースもあります。逆に売却益が100万円未満の場合は、税負担が比較的軽くなる傾向があります。売却前に税理士や税務署に概算を相談しておくと、資金計画を立てやすくなります。
国税庁「確定申告特集」ページでは、譲渡所得や事業所得の申告方法が解説されています。詳細は以下のリンクから確認できます。
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/shinkoku/tokushu/index.htm
売却価格が税負担に与える影響を、簡易シミュレーションで確認しておくと判断材料になります。
| 売却益(目安) | 所得税・住民税の目安(総合課税) | 備考 |
|---|---|---|
| 50万円 | 約5–8万円 | 税負担は比較的軽め |
| 150万円 | 約20–25万円 | 基礎控除・青色控除適用後 |
| 300万円 | 約40–50万円 | 税率10–20%程度 |
よくある質問
居抜き売却で得た収入は事業所得と譲渡所得のどちらになりますか
個人事業主が事業継続中に設備を売却した場合、事業所得として申告するケースが一般的です。ただし、廃業に伴う売却の場合は譲渡所得に該当する可能性もあるため、税務署で確認することをおすすめします。
売却益が赤字になった場合、税金はかかりませんか
売却価格が帳簿価額を下回る場合、売却損が発生します。青色申告者は他の事業所得と損益通算できる可能性がありますが、白色申告者は通算できない場合もあるため、申告前に税務署へ相談してください。
設備の取得価額が不明な場合はどうすればよいですか
購入時の領収書や固定資産台帳が見当たらない場合は、税務署に「取得価額の推定計算」について相談できます。合理的な根拠を示せば、近隣相場や同等品の価格を基に推定できる場合があります。
大家の承諾が得られないと売却できませんか
大家の承諾は契約上必要とされるケースが多いため、事前に確認しておくことが望ましいです。承諾が得られない場合、原状回復を求められる可能性もあるため、契約書を再確認のうえ判断してください。
確定申告を忘れた場合はどうになりますか
申告期限を過ぎると、無申告加算税や延滞税が課される可能性があります。期限後でも申告は可能ですが、早めに税務署に相談し、必要書類を揃えて手続きを進めることをおすすめします。